Very Best Of Unicorn ★★★★★

ザ・ベリー・ベスト・オブ・ユニコーン

Unicorn / Very Best Of Unicorn

::★★★★★::1993::CBS Sony::pop::rock::jp::
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ユニコーンのベスト盤。いわゆる「バンドブーム」の時期に登場し、髪をツンツンに立てていた初期から大人になったラストアルバムまで、18曲が年代順に並べられています。とにかく初期の代表曲であるtr1「Maybe Blue」が恥ずかしい。歌詞もサウンドもメロディも全部恥ずかしい。「ビートパンク」などという名称で呼ばれていた音楽ですね。ジュンスカイウォーカー(ズ)とか初期ザ・ブームとかパーソンズとか初期レベッカとか、王道ではボウイとか、あと時代は飛ぶけどジュディマリとかもこのへんの日本的縦ノリパワーポップの流れの末裔ですねぃ、たぶん。80年代後半にはたくさんありましたねぃ、そういう、歌謡曲とパンクとニューウェーブをかけあわせたようなバンド。てゆうか、ぼく自身そういうのに影響を受けてそういうバンドをやっていた時期があったのですが。はっはっはっ。若いころは色々間違いがつきものですよ。

で本作ですが、tr1「Maybe Blue」(1987)の他、tr2「Pink Prisoner」(1987)、tr4「I'm Loser」(1988)、tr5「Sugar Boy」(1988)あたりも思いっきりビートパンクですね。つうか、曲名からして奥田民生とは信じられないぐらい恥ずかしい。しかし、表面的な恥ずかしさをこらえてよぉく聴くと、いずれも良い曲です。また、初期の曲でも、tr2「ペケペケ」(1987)となると後期ユニコーンとまったく変わらない人を食った世界です。

ところで「ビートパンク」と言いましたが、ユニコーンって資質的にはパンクと同じぐらいヘビーメタルなんですよね。だから、初期の曲でさえパンク色よりもどこか野暮ったいヘビーメタル色がある。シンセの使い方とかも80年代アメリカン商業ロックみたいだし。で、そういったハードロック色をユニコーンのトレードマークとなる「悪ふざけ感覚」でコーティングしたのがtr6「服部」(1989)、tr8「おかしな二人」(1989)、そしてtr9「大迷惑」(1989)ですね。過渡期的。特に代表曲の一つである「大迷惑」は曲的には初期のビートパンク路線なんですが、「もうビートパンクをマジメにやるのは恥かしいし‥」って感じで、歌詞、アレンジすべての面でふざけております。「おかしな二人」は庶民的でビンボ臭い歌詞もサウンドもかなり後期ユニコーンっぽいです。で、それ以降、90年代の曲は、ひき続きいろんなことをやっているとはいえ、感覚的にはずっと同じ、どこか人を食ったような、「マジメにロックやるのってなんか恥ずかしいんだよね」路線。

で、その後期ユニコーンというのも、オレは個人的にはそのフザケ感覚が微妙なんですよね‥。ユニコーンの悪フザケというのはどうも笑えない、オレは。なんかすごく頑張っている感じがするのが。でも、ですね、幸いこのアルバムはベスト盤なので、フザケ路線は軽くうっちゃってちゃんとした代表曲が列挙されています。そうなると最強。なんせ奥田民生は天才ですから。特にtr11「自転車泥棒」(この曲は奥田の曲じゃないけど)以降は名曲の連続。どれも良いのですが特に大好きな曲に言及すると、まずtr11「自転車泥棒」。どこかVerseの部分はちょっと平凡だし、ドリーミーなアレンジもどうかなぁという感じなのですが、とにかくサビが死ぬほど良い。特に歌詞が泣かせます。次、tr12「働く男」。当時、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチ子、野沢直子という今では信じられないようなメンツで放映していた(しかも深夜枠)「夢で逢えたら」という名番組のオープニングテーマとして使われていて(歌詞も「せめて夢の中でも君に会いたい」となっている)、ぼくはこの曲でユニコーンを初めて(・∀・)イイ!と思ったんですよね。とにかくこの曲もサビが死ぬほど良い。オレ的にはユニコーンのベストトラックの一つであり、日本のロックの珠玉。エンディングが唐突にフェイドアウトするのはジョークなんだろうけど笑えねーよ。同じく「夢で逢えたら」のテーマ曲だったtr14「スターな男」も単純なロケンロールのふりをしつつ鬼のように転調するのが良かった。で、tr15以降は更に協力。全曲。タイトルがフザケすぎのtr15「ヒゲとボイン」(小島功の漫画からとったと思われるタイトル。内容はサラリーマン恋愛哀歌)は本当は名曲。歌詞もなんだか切ない。オレ的にはちょっと甘すぎだけど良い曲には違いないtr16「雪が降る街」、ビンボくさいラブソングtr17「与える男」、そして曲的に「ヒゲとボイン」と同路線でかつ更に良い曲tr18「すばらしい日々」の連発も強力。「すばらしい日々」はバーズ的西海岸フォークロックのふりをして微妙にギターがヘビーメタル風味なのもポイント。ユニコーン時代の奥田は時々バロック音楽の影響を受けているんじゃないかと思うことがあるんだけど、この曲はその最高峰。まさに有終の美であります。

いずれもシンプルで単純な楽曲なんだけど、シンプルさの中にマジックを起こすのは本当に難しいんですよ。恥ずかしい曲から死ぬほど良い曲まで、デコボコなロケンロールアルバムですが、ま総合的にはやっぱり星五つ。 (8/7/04)