Tidal ★★★★

Tidal

Fiona Apple / Tidal

::★★★★::1996::Epic::pop::rock::
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フィオナ・アップルのデビュー作。二作目を先に聴いたのですが、あまりピンと来ず。でもこのデビュー作は気に入ったですよ。なんでかな。こちらのアルバムの方があきらかに完成度は低いというか、サウンド・プロダクションは打ち込みが多くてちょっと平坦だし、曲もヘヴィーなジャジー・ブルーズのバラードが多くて、特に後半はとてもダウナー(でも後半も良い曲多いけど)。でも、その未完成なところにフィオナ・アップルの息遣いが聴こえてくる気がして良いです。とにかくまず冒頭の「Sleep To Dream」が超カッコいい。ヘヴィーなリズムのみをバックに韻を踏んだ歌詞をドスの聴いた声で吐きだすさまはティーネイジャー(当時)とは思えない迫力。自分との関係に少しも真剣でない男に、「私の足は地にしっかりついているし、夢見るために寝るわけじゃない」と怒りとともに別れをつきつける、その毅然とした態度が、スタイリッシュだが直球勝負の歌詞で綴られている佳曲。もう一曲、白眉はtr3「Shadowboxer」。別れて今は友人の男への思いが断ち切れず、男の「次の動き」を期待してはりつめた思いの自分を「シャドーボクサー」に投影するのが切なく、かつ独創的。女性なのに漢らしい。曲的にも歌的にも粗い曲だけれど、尋常ならぬ気迫で、このアルバムのハイライトと言えるでしょう。前述したとおり、全体的には若干平坦だけれども駄曲もない佳作。 (5/9/04)