The Call Is Strong ★★★★

Carlton / The Call Is Strong

::★★★★::1990::ffrr::club::dub::trip hop::
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スミス&マイティーのプロデュースで、このファルセット・シンガーがデビューしたとき、ちょうどイギリスではソウルIIソウルのグラウンド・ビートのブームまっさかりで、このアルバムもその文脈で語られることが多かったと記憶してます。グラウンド・ビートは、特にソウルIIソウルのそれはダブの影響が大きいので、その文脈でこのアルバムを語るのも間違いではないのですが、今聴くとこれはグラウンド・ビートではなくトリップ・ホップですね。マッシヴ・アタックのデビューに先駆けること1年、ダークでダビーな世界がひっそりと開花した一枚です。てゆうか、スミス&マイティーってマッシヴ・アタックと同郷(ブリストル)だし。このアルバム、tr2「I Know」みたいに、シンセの中途半端な派手さがちょっと時代を感じさせる曲も入ってますが、強力な曲もちらほら。冒頭の「Cool With Nature」の深みはただものじゃないし、tr3「We Vie」は更にダークで深淵を感じさせる音響。平坦なカールトンのファルセット・ボーカルもはまってます。もう一曲の目玉はtr6「Do You Dream」。ハウスビートですが、音を最小限に切りつめたミニマリストでダビーなグルーヴは珠玉と言ってよいでしょう。他の曲は、若干時代を感じさせるところもありますが、背後にあるレゲエ、ダブの強い影響に注意を向ければ、これがトリップホップの雛型的作品だということは明確に分かるでしょう。リアルタイムでは「平坦すぎる」「無機質すぎる」という批判もありましたが、時代をさきどりしていたということです。 (1/25/04)