Cowboys To Girls: The Best Of The Intruders ★★★★★

Best Of: Cowboys to Girls

The Intruders / Cowboys To Girls: The Best Of The Intruders

::★★★★★::1995::Epic::soul::
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イントゥルーダーズというのは、基本的に限りなくB級なボーカル・グループだと思うんですよね。フィラデルフィア・ソウル(フィリー・ソウル)という一ジャンルを70年代に築きあげて非常に大きな影響力を持ったヒット・メイカー、ギャンブル&ハフの送りだした第一陣のグループだったイントゥルーダーズ、68年に「カウボーイズ・トゥ・ガールズ」をヒットさせてから、70年代は大きなヒット曲もなく過ごした彼ら、そんな彼らに70年代のフィリー・ソウルの大物グループ(オージェイズ、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツスピナーズスタイリスティックスなど)と比べて欠けていたものはなにかと言えば、歌唱力。これにつきるでしょうね。リトル・サニーのリード・ボーカルはフィリー界切ってのヘタウマ。どこか寝惚けたような、よたったボーカルは、それでも、技術を超えた親しみを持って聴き手を迎えるのであります。加えて、バックのコーラスが透明感があって良いんですよね(コーラスは別に下手ではないです)。朴訥としたリードと透明感あるコーラス、この絶妙の組みあわせがマジックを生むのです。で、歌唱力はあまりありませんから、ギャンブル&ハフも、重厚なソウル曲は彼らに与えず、わりにライトでポップで、時にちょっと変わった楽曲を割りあてました。そのおかげで、このベスト盤におさめられている曲はどこかノスタルジックで甘酸っぱい珠玉のポップスばかり。

もう、1曲目「A Love That's Real」からいきなりトキメキ・ワールド。甘くポップなメロディーにグッときます。ナンバーワン・ヒットtr2「Cowboys to Girls」は、リトル・サニーの眠そうヴォーカルが炸裂・・・って、眠そうなのに炸裂するのはちょっと表現としておかしいけど、冒頭の「ありめんばっ!」(I remember)を聴くと、そう表現したくなる。シャウトしてるんだけど、この人の場合、なんとなく呑気というか、ひきずるようにというか。「憎めない」という言葉がぴったり。続くtr3「Together」は、もう、イントロから胸キュン全開、歌詞もねえ、「We could be on a desert, lost without a place to go(ぼくたち、砂漠でまよって行くところがなくなっても大丈夫さ)」ではじまり、サビは「Together, together/Baby, just you and me」ですよ。もう、あまりにベタな世界。この「そのまんま」感がたまりません。歌詞が素晴らしいと言えば、ダンサーのtr5「(Love Is Like A) Baseball Game」。タイトルからしてすでに素晴らしいけど、「ストライク・ワン、ストライク・ツー、ストライク・スリー、ああ、ぼくは君にアウトさ」という歌詞にももう涙ちょちょぎれます。同時に、「ベースボール」が少年たちのあこがれだったころの古き良き時代を思い起こさせて、原体験のないはずの不思議なノスタルジーをかきたててくれます。ほかにも、tr8「Me Tarzan, You Jane」とかもタイトルからしてそんな感じでしょ。なんとなく波打ち際のミス・コンテストを思い起こさせるフィリー・ダンサー、tr11「(Win, Place Or Show) She's A Winner」なんかもう、その甘くソフトなグルーヴにのるヴォーカルのメロウさがたまりません。個人的なベストトラックのひとつ。

その他ダンサー系では、ギャンブル&ハフらしく「家族愛」というメッセージをうちだすtr13「I'll Always Love My Mama」や、文字どおりポジティブなメッセージのtr19「To Be Happy Is The Real Thing」、ギル・スコットヘロンのカバー「Save The Children」など、後期の曲も、演奏、曲、アレンジ、ボーカルいずれも素晴らしい。イントゥルーダーズみたいなグループにはこの言葉はあまり似つかわしくない気がするけど「非のうちどころのない」ベスト盤です。 (1/4/04)