Point ★★★★★

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Cornelius / Point

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なんか、いつのまに「寡作ミュージシャン」への道まっしぐらな小山田君/コーネリアスの、4年ぶり、3枚目のアルバム。こんだけ間があくと、もともとパラノイア的な小山田君のことだけに、もう煮詰まりまくった内容なんじゃないかという危惧が生まれるわけですね、聴くまえから。実際、レコード屋で試聴したとき、おそらくコーネリの代表作となるであろう前作「Fantasma」と比べ、一聴してわかる抽象度の高さだったため、ぼくは瞬間的に「ああ、やっちゃった‥考えすぎてとっつきにくいアルバムつくったな」と思ってしまって敬遠してしまいました。しかし、遅ればせながらこのアルバムをきちんと最初から最後まで聴きまして、ぼくの最初の思いこみは間違いだと思いしらされました。確かに、相当凝ったアルバムであるし、前作に比べ圧倒的に抽象的なのは確かです。しかし「考えすぎ、時間かけすぎで煮詰まった」というのはまったくの間違いでありました。むしろ、このアルバムは前作「Fantasma」よりも新鮮で瑞々しい作品です。丁寧に構築されたビート、ギター、サンプリング、そして、パラノイア的&人工的に重ねられたコーラスなど、いたるところに工夫とこだわりがあるのですが、全体としては気持ちよくつきぬけていて、何回聴いても閉塞感を感じることがありません。これもひとえに、理詰めのコンセプトよりも、ジャケにあらわれているような、抽象的で直感的なビジュアルを音楽で表現することをめざしたことの効果ではないでしょうか。このアルバムにはいたるところに「Point」という視覚的テーマが散在しており、同時に、鳥や水の音のサンプリングなど、意図的に「擬似的自然」が構築されています。あきらかにフェイクの世界なのですが、その嘘くささを前提とした清々しさがあるんですよね。轟音ギターノイズで「スコール」を表現するところなど、見事な発想です。

前作は、イギリスのギターポップの流れを直接的にふまえた内容でしたが、このアルバムではそれもなく、唯一無二の世界が無理なく構築されていて、見事。コンセプトアルバムゆえ、一曲をとりだしてどうのこうの言うことができない作品で、それゆえの弱みはありますが、捨て曲は一曲もなく、素晴しいです。 (6/15/03)