Niice N' Wiild ★★★★

Nice 'n' Wiild

Chuckii Booker / Niice N' Wiild

::★★★★::1992::Atlantic::r&b::
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80年代に活躍したコンテンポラリーR&B+ファンク・グループのリーダー、チャッキー・ブッカーですが、90年代はソングライター、プロデューサーなど、裏方で主に活動してました。そんなブッカーが出したソロ作品(2枚目)。あまり売れなかったみたいですが、まあ、裏方だし、そんなに強欲に売る気もなかったのかもしれません。しかし、内容は良いのであります。最初聴いたときは、あまりにありきたりな90年前後のファンキー・コンテンポラリーR&Bなので、ダサいジャケもあって、すぐにCD棚に送られてしまったのですが、こうして聴きなおしてみると実に良い内容。

まず曲が良い。サウンドも良い。歌も良い。スキが全然ない。そのスキのなさ、ソツのなさのせいで、最初耳を素通りしてしまったんでしょうね。ブッカーはジャネット・ジャクソンの「リズムネイション」ツアーの音楽ディレクターもやっていたそうなんですが、ここでの音も基本的には、プリンス〜タイム〜ジャム&ルイスの直系のブラコン・ファンク。特に、「I Giit Around」などのファンク・ナンバーにそれが顕著。でもモノマネというのではなく、ちゃんと自分の味に昇華しているし、しかもベースの音など非常に気持ちよく鳴っていて良いのであります。また、一方では、冒頭の「Spinnin」や「With All My Heart」のように、メロウで美しいリズムナンバーもあって、いやーツボ押さえてるなあと感心。

ただ、時代的に、ヒップホップの影響があってもよさそうなのに、あくまでジャム&ルイス〜テディ・ライリーのブラコン・ファンク路線に徹しているのがなんつうか、まあ、内容の良さのわりにそれほど売れなかった理由なんでしょうな。ソロアーティストによるメロウなブラコンR&Bの皮をかぶっているけど、中盤以降の「Giit Around」「Front Line」「Soultriilogy 三部作」「Niice N' Wiild」のようなバンドものファンクの曲の方により気合いが入っていて、ちょっとニヤリとさせられます。「Soultriilogy」は第一部がジェイムズ・ブラウン(プリンス味)、第二部がPファンク(プリンス味)、そして第三部がプリンスと、はっきりとしたオマージュ対象があって、しかもどれも超カッコいいです。

こういうバンドっぽいファンクサウンドがほとんど絶滅してしまっただけに、逆に貴重です。 (6/5/03)