Mission To Please ★★★★

Mission to Please

The Isley Brothers Featuring Ronald Isley / Mission To Please

::★★★★::1996::Island::r&b::soul::
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アイズリー・ブラザーズというのはすごいバンドなんです。50年代末にR&Bボーカルグループとしてデビューしているから、キャリアはこのアルバムが出た段階で40年ほど。プロとしてのキャリアが半世紀に到達する日もすぐそこです。で、アイズリーズのすごいところはそれなりに浮き沈みはあったものの、節目節目に後世に残る曲を出していることでしょう。たとえば彼らの50年代の最初のヒット曲「シャウト」は今でもテレビやラジオや有線で聴くことができます。彼らの62年のヒット曲「ツイスト&シャウト」がビートルズによって再ヒットしたのも有名です。60年代後半のファンキーR&B「イッツ・ユア・シング」は、これまた数多くのアーティストにカバーされ続け、今日のヒップホップやクラブ音楽で数え切れないほどサンプリングされています。70年代の「黄金期」のロッキッシュなファンク路線も影響力が大きかったですが、同時にどこかダークなバラード路線での後世のヒップホップ世代への影響は非常に大きく(特に1975年の「For the Love of You」)、その極めつけが1983年のバラード「ビトゥイーン・ザ・シーツ」で、一時期、ヒップホップ界でこの曲のサンプリングがあふれかえったほど影響力が大きかった。サンプリングということだけでなく、ヒップホップ時代のバラディアーへの、歌唱スタイルや、ダークな曲調、哀しげなディストーション・ギターといった要素が与えた影響というのも非常に大きかったわけです。

そんなアイズリーズ再評価ブームのなかで5年ぶりにリリースされたのがこのアルバム。ファンクが一曲もなく、かなーりベタな愛欲バラード路線だったことに対して批判的な向きもあったし、ぼくも最初は不満たらたらであったのですが、しかしねぇ、なんか結局聴いてしまうんですよ。そして何回も聴いているうちに良くなってくるんですよ。40年選手とは信じられないような、いや、40年選手だから出せると言ったほうがよいか、とにかく緩い、極上のスウィート・グルーヴが続くのです。Rケリー、キース・スウェット、ベイビー・フェースが提供した曲も良い(特にベイビーフェースの「Tears」は本当に涙もん)けど、ロナルド・アイズリーの伴侶のアンジェラ・ウィンブッシュの、微妙に80年代っぽいが決して古くはないシンセ中心のサウンド・プロダクションもきらびやかで良い。冒頭の「Floatin' On Your Love」とか、シンプリー・レッドのカバー「Holding Back The Years」とか。アイズリーズは昔からカバーのセンスが最高に良かったけど、このカバーも秀逸。ボーカルのレイヤーが波のように寄せては返す「Let's Get Intimate」はマーヴィン・ゲイへのオマージュにも聴こえて涙。 (5/19/03)