Music Typewriter ★★★★

Music Typewriter

Moreno Veloso + 2 / Music Typewriter

::★★★★::2001::Hannibal/Natasha::brazil::
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ブラジルで、いや世界でもっとも素晴しいミュージシャンのひとり、カエターノ・ヴェローゾの息子、モレーノ・ヴェローゾのデビュー作。カエターノとモレーノの位置関係はなんとなくジョン・レノンショーン・レノンの位置関係を思いおこさせます。激動の時代を生き抜いたカリスマの親父に対して、息子はもっと肩の力が抜けていて、なんとなく音楽にギラギラした欲みたいなものを感じさせない。モレーノもショーンもボーカルは親父ゆずりだけれど、息子のほうにも息子なりの良さがあって悪い意味でのクローンという感じはしない。しかし、デビューアルバムを比べるとこのモレーノのデビューの方がショーンのそれよりずっと上という感じがします。とにかく一曲目の「Sertao」からして素晴しすぎる。この曲はカエターノとモレーノの父子の共作なんですが、せつないメロディーと、モレーノの線の細いボーカルが良いんですね。カエターノも甘い声ですが、モレーノはもうちょっと声域が高くて美しい声です。完璧なオープニングです。アルバムのプロデューサーは、アート・リンゼイとの仕事で知られるアンドレアス・レヴィンで、リンゼイの作品でも同じみのメルヴィン・ギブズ(b)なんかも参加していて、全体にアート・リンゼイのアルバムと似た雰囲気があります。つまり、内省的でメロウで実験的でニューヨーク的。でもブラジル録音なのでもうちょっと開放的か。オープニング以外に決め曲と言える曲がないのが不満で、そのあたりはこれからの課題でしょうが、小粒ながら全曲良い曲、演奏、歌で、素晴しいアルバム。 (5/6/03)