**LIVE REPORT: Paradise Rock Club, Boston, MA, Feb 23, 2003, $15** ★★★★

Sixpence None The Richer / **LIVE REPORT: Paradise Rock Club, Boston, MA, Feb 23, 2003, $15**

::★★★★::2003::::pop::rock::

バーカウンターでビールを注文したら瓶のまま渡された。びっくり。危険だからプラスチック・コップに入れて渡すのが普通なのに‥。これがある意味今日のコンサートを象徴していたような。シックスペンス・ナン・ザ・リッチャーのライブですが、クリスチャン・ロック出身で特に最近はマイペースで地味な活動を続ける彼ら(レコード会社とのゴタゴタのせいもありますが)。客層も実に大人しそうな感じでしたね。ふだんクラブなんかに絶対こなさそうなスラックス履いたひととか、あと、オッサンもちらほら見られた。決めつけるのも良くないが、たぶんクリスチャン・オーディエンスなのだろう。でもオバハンはほとんどいなかったな。あのオッサンらはリー・ナッシュのおっかけか? あと、東アジア人の観客の姿も多かったんだけど、やはりあれはクリスチャン率が非常に高い韓国人のオーディエンスだったのだろうか。ちょっとクリスチャン・バンドへの偏見入りすぎてるかもしれないけど、とりあえず普通のオルタナ系ロックバンドの客層と、極端に違うわけではないんだけど、どこか雰囲気が違う、微妙な客層であったのは確かです。で、あまり「クリスチャン・ロック出身だから‥」などと喧伝しすぎるのも良くないので、一言付けくわえておくと、コンサート自体はクリスチャン色は皆無でありました。キリスト教を示唆するアイコンはどこにも一切なく、たとえばロック・ミュージシャンが普通にしているような、十字架のネックレスとか、そういうものもバンドメンバーは一切してなかったですね。バンド自体が「クリスチャン・ロック」という括りに入れられるのを良しとしないのは事実のようです。

肝心のコンサートの内容の話の前置きが長いですね。でも、なんというか、内容の方も不思議な雰囲気だったんですよね。まず、ボーカルのリー・ナッシュの服装がヘン(って、それも内容じゃないって)。最初黒いニットのポンチョみたいなのを着ていて、おいおい、それがステージ衣裳かよ!と思ったのですが、ポンチョを脱いだその下の白いドレスも、胸から上の露出はあったものの、大きな刺繍の模様が入ってたりして、やっぱロック・ミュージシャンっぽくない。あ、でもリー・ナッシュはそれなりに歳とって、ちょっと太ったけど、やはりどことなくロリータっぽくてカワイかったですよ。それにしても化粧が薄い。なんつーか、ほんと、地味。で、ステージングも地味。照明効果もほとんどないし、リー・ナッシュはスタンドマイクで歌うし、MCも最小限で、淡々と曲を演奏する。ほとんどの曲は新作「Divine Discontent」からの曲で、このアルバムの曲は数曲を除いてほとんど全部やったんじゃないかな。アレンジもほぼアルバムと同じ。「Divine Discontent」の曲が内省的でダークな曲が多いので、ステージも全体的に内に内に向かうような感じ。ヒットした超明るい「There She Goes」なんかもやったんだけど、完全に浮いていた。

で、こう書くとダメダメなコンサートのような印象も与えるかもしれないけど、実は悪くなかったんですよ。アレンジに変化はないといえ、丁寧に演奏され、丁寧に歌われる曲の数々。新作の曲はどれも良いので飽きさせない。ナッシュのボーカルは、スタジオ盤のようなマジックには欠けるけれども、それでも好ましいものだったし、地味な服装、化粧なのに、持ってうまれたスター性やカリスマ性は隠せない。曲としては、「Melody Of You」や「Eyes Wide Open」のようなダークな曲が、まったく愛想のないバンドのステージングにぴったり合ってました。もっとダークな方向に行くと面白いかもしれない。しかしまあ、このバンドはこれからどこに行くのでしょうね。かつて「Kiss Me」の大ヒットでスターになったものの、そのスターダムに戻る気は全然なさそうだし。かといって、今の状態は明らかに過小評価されすぎだと思う。非常に微妙な、ローテンションな、それでいて心に訴えるものもあった不思議な好コンサートでありました。 (2/25/03)