Good To Go Go ★★★★

Chuck Brown with T.T.E.D. Allstars / Good To Go Go

::★★★★::1992::JIMCO::soul::r&b::
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実家から発掘した一枚。発掘と言っても自分で買ったものだけど。ゴーゴーというワシントンDCの黒人音楽があるのですが‥ゴーゴーといってもゴーゴーダンスのゴーゴーではなく、80年代中頃から後半に勢いのあったファンク音楽なんですよね。で、そのゴーゴーのコンピレーションアルバム(日本編集)。チャック・ブラウンを中心に、E.U.、トラブル・ファンク、レア・エッセンスなどの演奏が収録されています。ゴーゴーというのは、ゆっくりスウィングするドラムのエンドレスなリズムにさまざまなメロディやかけ声などが折り重なって構成されるファンクで、一曲が10分でも20分でも30分でも続くという「無限ループ」が特徴です。その意味でPファンク的な流れと言えると思うのですが、Pファンクよりもジャジーな要素やコンテンポラリーな要素が強い気がします。全体的には体力勝負の泥臭いグルーヴではあるのですが、ここに納められている曲にも驚くほどブラコンっぽいメロディも飛び出してきたりして、そのへんのバランス感覚も楽しい。また、このゴーゴーのリズムは、80年代末のソウルIIソウルによって広まった「グラウンドビート」のルーツであることでも有名で、その他、マイアミ・ベースのリズム、そしてニュージャックスウィングにも影響を与えたと言う意味でも忘れられません。

思うに80年代というのは打ち込みの時代であり、70年代後半に隆盛したファンク/ディスコファンクも、打ち込み、ディスコ、ニューウェーブなどの波にのまれてしまい、ザップ/ロジャーやキャミオ、プリンスなどの、打ち込みやシンセをうまく消化したごく少数の例外をのぞき、ファンクバンドというものは死滅してしまいました。その中であくまで肉体的な生演奏を売りにしていたゴーゴーが80年代に、それほど大きくないながらも花を咲かせたというのは奇跡に近いかもしれませんね。このコンピを聴いていると、なんとなく理由が分かる気がします。というのも、エンドレスリズムの上にあらわれて消えるさまざまなフレーズが、オリジナルのメロディやかけ声だけでなく、時々有名曲のフレーズだったりするんですよね。その自由度がなんとなくヒップホップっぽいとも言えるんですよ。

ゴーゴーは全国的にはごく短命でしたし、しかもその「短命」の間もそれほど大きなうねりにはならなかったため、知らない人の方も多いサブジャンルだと思います。しかし、ゴーゴーは今でもワシントンDCのローカルクラブで燃え続けているそうです。2001年にはチャック・ブラウンのライブアルバムもインディーレーベルから出たみたいで、かなり元気らしいです。そういう話を聴くとなんだかうれしくなってしまいます。ハイ。 (2/12/03)