For Lovers Only ★★★

For Lovers Only

The Temptations / For Lovers Only

::★★★::1995::Motown::r&b::
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テンプスはほんとにシブといグループです。テンプスといえば60年代の栄光があるわけですが、このショービズの世界、あれぐらいの成功があればその過去の栄光で食って満足するのがフツーなわけですよ。しかしテンプスのスゴいところは、1964年のデビューから現在まで、大きなブランクもなく、「新作」を製作することにこだわってきたところです。もちろん、浮き沈みの多いショービズですから、テンプスにも低迷期は何度も訪れました。しかしそれでも淡々と辛抱強く新作を出し続けた姿勢は評価されてしかるべきでしょう。これも、リーダーのオーティス・ウィリアムズの強い意思があってのことですよね。とはいえ、テンプスはファミリー的結束でずっと同じメンバーで押し通したグループではなく、節目節目でメンバーを大胆に入れかえてきました。特に、グループの顔であるはずのリード・ボーカリストがグループのキャリアを通して一定でないことを批判する向きもあります。しかしメンバーが代わってもテンプスはいつもどこかテンプスのスピリットがちゃんと感じられるのがスゴいです。ちなみに、テンプスのオリジナル・メンバーは、リーダーのオーティス・ウィリアムズを除いてすでに全員故人なんですよね。世の常として肉体は滅びてしまいます。ウィリアムズはテンプスの精神を永らえさせようとしているわけです。

さて、前置きが長くなりましたが、本作は全曲、スタンダードを中心としたカバー。ベテラン・グループはかならず録音するような企画アルバムですが、これが意外に良いのです。この手の企画にありがちな後ろ向きな姿勢はここにはないのが勝因でしょう。古い楽曲に現代的な味つけをほどこし、しかし無理して背伸びはしない。そのあたりのさじかげんが絶妙です。懐古趣味にとどまらなかったのは、リード・ボーカルのアリオリー・ウッドスンの、型にはまらないワイルドな持ち味のおかげでしょうね。ちなみに、このアルバムは、オーティス・ウィリアムズとともにテンプスを30年間ささえてきた「最後から二番目のオリジナル・メンバー」、メルヴィン・フランクリンの追悼アルバムになっています。合掌。 (1/16/03)