Divine Discontent ★★★★★

Divine Discontent

Sixpence None The Richer / Divine Discontent

::★★★★★::2002::Reprise::pop::rock::
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シックスペンス・ナン・ザ・リッチャーといえば、かつて「Kiss Me」がヒットしていたころ、「こんなんただのサンデイズジュディマリじゃん!」とかサンデイズ・ファンにもジュディマリ・ファンにもシックスペンス・ファンにもしばきたおされそうな感想を抱いてバカにしていたのですが、少々気がかわりまして、この新作を買ってみました。新曲がけっこう良かったし。こうしてアルバムを聴くとこのグループは曲が非常に良いのがわかるのですが、弱味は、格別に新しいところがないところでしょうか。「オルタナ世代のSundays」と言えばそれで終ってしまいそうな。いや、もっと色んな要素は入ってはいるんですが、スミス風味だったり、オーシャン・カラーシーン風味だったり、オアシス風味だったり、わりに既存のバンドの良いところ取りという感じなんですよね。まあ、テキサスのバンドなのにこんなにイギリス指向なのもおもしろいといえばおもしろいですが。で、なんだか褒めてんのかケナシてんのかよくわからない感想文になっていますが、しかし以上述べた欠点をカバーしているのはLeigh Nashの子供声ボーカルです。Sundays系といえばそれまでなんですが、歳とともに良い具合に声が枯れてきています。「Eyes Wide Open」のようなメロディの起伏の激しい曲で特に聴く者の心をつかみますね。聴くほどに味の出る魅力あるシンガーであります。

ただひとつ個人的に残念なのはこのバンドがクリスチャンのバンドだということですね。ぼくは宗教の意義や影響というものを認めるのはやぶさかでないのですが、宗教の主張する「存在」に激しく抵抗を覚える人間であり、特にキリスト教はだめなんですよね‥。だから、音楽とは直接関係ないと分かってはいても、ボーカルのLeigh Nashの「今の私があるのはすべては神の導きです」などと言うインタビューを読んだりすると激しく萎えてしまいます。このアルバムでも一曲目のシングル「Breathe Your Name」が遠まわしの信仰告白で、曲は良いんだけど、信仰告白につきあわされてんのかと思うと萎えます(「神」という言葉は一切出てこないし、良く聴かないと信仰の歌だとはわかりませんが)。とはいえ、このバンドはクリスチャン色を抑える方向に進んでいるそうで(クリスチャンの国アメリカでもクリスチャン・メッセージを押しだすバンドはクリスチャン・ロック界の外部では冷たい扱いを受けてしまうから)、このアルバムでも、まあ、アルバムタイトルがちょっとモロではありますが、アルバムタイトルと一曲目以外は信仰に直結する曲はないのが救いです。というか、むしろこのアルバムでは苦悩、苦痛、悲劇といったネガティブな内容の歌詞に傾いており(それゆえのアルバム・タイトルというわけです)、好感が持てます。いや、ネガティブだから良いというわけではなく、より現実に近い、ひりひりとした生の感覚を大事にしているから。というわけで、ゴスペルとかも歌詞ゆえダメなぼくですが、このアルバムは個人的許容範囲内であります。 (12/18/02)