Lost In Translation ★★★★

Lost in Translation

Original Soundtrack / Lost In Translation

::★★★★::2003::Emperor Norton::pop::rock::electro::
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マイブラケヴィン・シールズ参加のサントラ

日本を舞台にしたソフィア・コッポラの映画のサントラ。この(比較的)低予算映画は、内容もしんみりしてよかったけど、音楽も良いんですよ。多くのサントラと同じく、既存の曲が使われているんだけど、もう、この映画のために作られた曲じゃないかというほど映画にぴったり合った曲が多く、選曲の秀逸さに感心してしまいます。音楽監督はジョン・マニングJrとブライアン・ライツェルという人なんだけど、なんとマイ・ブラディ・バレンタインケヴィン・シールズもプロデュースにかかわっていて、マイ・ブラの「Sometimes」が収録されている他、シールズのソロ名義の新録も4曲入ってます。これについては後述します。

ではこのアルバムのハイライトについて語ると、まずはスクエアプッシャーのtr4「Tommib」(ぼくの評価の低い「Go Plastic」収録)。変態ドラムンベースではなく、ビートレスのメランコリックなエレクトロナンバーの小品(1分20秒)。確かスカーレット・ヨハンセンがホテルの部屋にいるシーンでかかっていた曲だと思いますが、このサントラでは強い存在感を放っています。映画で描かれていた、異国の地にいる違和感と寂寥感とかすかな刺激が集約された佳曲で、ほんと、この映画のために作られたような曲です。映画のための書きおろし曲の多くがチープなエレクトロ曲ということもあって、その代表としてこのスクエアプッシャーの「Tommib」が輝いています。てゆうか、スクエアプッシャーを使う映画のセンスがすごい。

次のデス・イン・ヴェガスのtr5「Girls」は映画の中でもっとも印象的な曲の一つ。映画では、最初の方のシーンでリムジンの中で時差ボケから目覚めたビル・マーレーが東京の派手なネオンを目にして、初めて異国と興奮とかすかな疎外感を覚えるシーンでかかっており、あのシーンにはこの曲以外ありえないんじゃないかというはまりぐあい。当サントラでは、前のスクエアプッシャーの曲とのつながりがまた最高ですばらしい。

その他では、フェニックス(フィーニックス)のtr7「Too Young」のダサさをねらったような明るい楽曲も良いけど、なんといってもマイ・ブラディ・バレンタインのtr11「Sometimes」が素晴しい。大体、よく知っている曲が映画でかかると自分なりの曲に対するイメエジが逆に邪魔をして違和感をおぼえたりするものだけれど、この曲が映画で鳴ったときは単純にぐっと来ました。あれも「あの場面にはこの曲」しかないという感じでしたね(ちなみに、夜のドライブのシーン)。そうか、マイ・ブラは夜の東京が良く合うんだ。

さて、そのマイブラケヴィン・シールズの書きおろし曲ですが、まずtr2「City Girl」は、マイブラのデモ曲みたいな曲ですね。意図的かどうかわからないけれども、かなり荒削り。完成度には不満もあるけれども、人をナメたような馬鹿げた歌詞(「City girl...you're beautiful...I love you」)もシールズ一流のジョークか。他の書き下ろし3曲はいずれもエレクトロ〜環境音楽的な短かいイントロで、曲としてはどうってことないけれども、映画の雰囲気をよく伝えてます。同じことは音楽監督のマニングJr&ライツェルの書き下ろし曲にも言えて、あえてチープな味にしたのがこのサントラに個性をあたえています。

日本人の曲はエンディング・テーマだったはっぴいえんどの「風を集めて」のみ。ちょっと浮いてるか。実際京都のシーンで使われていたAirの「Alone In Kyoto」はキラい。あと、シークレットトラックのビル・マーレイのカラオケはいらん! (9/18/04)