Future 2 Future ★★★★

Future 2 Future

Herbie Hancock / Future 2 Future

::★★★★::2001::label::jazz::club::
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ハービー・ハンコックの新作はビル・ラズウェルと組んだ作品‥ということで、当然、異種格闘。今回はクラブ音楽との結合。ビル・ラズウェルってあまりポップセンスのない人だとぼくは思っていて、だからこそ、彼のプロジェクトは着眼点や発想が良くても詰めが甘いのが多い‥ような気がする。だからラズウェルのかかわった作品というのはいつも眉唾で聴くことになるのですが、今回はどうか。結論からいえば良いです。カール・クレイグア・ガイ・コールド・ジェラルドなどの敏腕者たちに多くの曲のアレンジをまかせたのが良かったのかもしれない。特にカール・クレイグの功績が光ります。このひとはテクノ畑なのになぜかアコースティックでパーカッシブな音づくりも得意で、ジャズにも良く合っている。

一方、参加ミュージシャンも豪華で、トニー・ウィリアムズ(ds)が一曲に参加している(生前に録った演奏なのだろうか?)ほか、ウェイン・ショーター(t.s)、シャカ・カーン(vo)など。まぁ、ハンコックの顔ならどんな豪華なメンバーが集まっても不思議ではないのですが。この中ではシャカ・カーンが一番合っていない気がした。ショーターは、アンビエントというかニューエイジっぽいような持ち味もあるからクラブっぽい音には比較的合っているか。トニー・ウィリアムズの曲はずばり「トニー・ウィリアムズ」と題された曲で、女性による詩の朗読をまじえた味わい深くかつクラブっぽい音響の曲でとても良いです。他に良い曲はカール・クレイグのパーカッションが良い味の「ケベロ Part II」、それに、Karsh Kaleというパーカッショニスト/ドラマー(本作では多くの曲で参加している)が打ち込みを手掛けた「イオノスフィア」あたりかな。

デレク・メイの古典「リズム・オブ・ライフ」をベースにした曲も入っているなど、クラブ音楽へのアプローチといっても、全体に古典テクノ(デトロイト、シカゴなんかの)っぽいレトロな雰囲気が漂っているのもおもしろい。まぁ、ラズウェル作品特有の「食い足り無さ」があったり、ハンコックのキーボードが控えめであまり聴かせどころがないのが不満ではあるけど、一聴の価値はある作品じゃないかと。草加な曲が入っているのがひっかかるとはいえ。 (1/12/02)