Distance ★★★★

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宇多田ヒカル / Distance

::★★★★::2001::Toshiba EMI::pop::rock::jp::
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宇多田ヒカルをちゃんと聴くのはこれが初めて。これはセカンドアルバム? まず一曲目の歌謡曲的泣き節&ダサいギターにズッコケる。この曲はジャム&ルイスがプロデュースしているのですが、テキトーに仕事してるなぁという感じ。この人たちはギャラさえ払えばなんでも仕事を受けるタイプの職人系プロデューサーなんだけど、まぁ、この仕事は気がのらない仕事だったろうなと容易に想像できます。そんな感じのテキトーなサウンド。てゆうか、こんなアジアテイスト全開の曲を渡されてジャム&ルイスもさぞかし困ったことでありましょう。

などという悪口はともかく、でも、なんというか、この泥臭いアジアテイストが宇多田の魅力なんだろうなというのも痛烈に感じます。全体的にダサいのだが、そのダサさが一種気迫となって迫ってくるのがすごい。そしてなによりも歌が素晴らしくいい。Misiaを聴いたときは別に何の印象も受けなかったけど、宇多田の歌はずばぬけて素晴らしい。この若さにして、個性もテクニックも天才的です。たしかに、技術的には黒人シンガーの影響を強く感じるのですが、宇多田がすごいのは、それ以上に日本的な湿り気が痛烈に伝わってくるというところですね。なんというか、宇多田の歌のこの「むせび泣きぐあい」はまさに「和」のこころです。これは日本のブルーズなんじゃないか。

で、ダサめの曲やサウンドプロダクション(それほどダサくない曲も入っている)も、この宇多田の過剰とも言える歌の存在感に合っているような気になる。たとえば、「蹴っ飛ばせ!」という曲はわけのわからない作曲センスでつくられた奇妙な曲なのですが、その奇妙さも宇多田の歌唱が一緒だと妙に説得力があったりします。

これからどこへ行くのか、楽しみでもあるし不安にもなる作品。とりあえず宇多田父の呪縛からは早めに逃れた方がいいと思うのですが‥。 (12/11/01)