The Velvet Underground & Nico ★★★★★

Velvet Underground & Nico

The Velvet Underground & Nico / The Velvet Underground & Nico

::★★★★★::1967::Verve::pop::rock::
iTS US / iTS US (Delux Edition) / iTS JP(→iTSについて

このアルバムに関して、ぼくは昔所有するアナログ盤のジャケットのバナナをめくろうとしてうっかり破ってしまったという悲しい思い出があります(あれは相当慎重にめくらないと破れてしまう)。当時は(まだガキだったし)このアルバムはそれほど好きではなかったのですが、ぼくの耳もだいぶ変わったので、今CDで買い直してみて、イイ!と感じ入っている次第であります。

前置きはこれぐらいにして‥

ロックなどの名盤を語るとき、しばしば「革命的」という言葉が使われますが、考えてみれば「革命的」というのもずいぶんと曖昧な含意の言葉です。既成の枠組みをただぶち破るだけならランダムな騒音を任意の単位にわけて曲と称してCDなりアナログ盤なりの媒体に収録して世に出せばいい。個人的にそういう音楽(?)も好きなのですが、そういうのは実験的とは言われても革命的とは言われないわけです。革命というからには既存の型となんらかのつながりが必要であり、その範囲内で斬新な何かが提示される必要があるんですよね(と同時にそれがメインストリームな流れにつながることも必要条件)。だから、「革命的」と言われる名盤にはかならず相当量の穏健性が兼ねそなわっているのです。

で、その意味で、ロック音楽史上で最重要アルバムのひとつとされるこのヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコのデビュー作も、正統的に「革命的」なアルバムということになります。革新的な部分を挙げれば、ポップ・カルチャーの枠を破る歌詞、ミュージシャンシップとは何かと再考させられるような独特の演奏(簡単にいえばヘタウマ的。特にモーリーン・タッカーのドラム)、民族音楽の香り、アンディ・ウォーホルの存在、ノイズの効果的利用、ルー・リードのカリスマ性‥などなど。まあ、このあたりは語り尽くされているのでここでは繰り返しません。

もっとも、革新的な部分というのは時代がたてば革新的でもなんでもなくなるわけで、結局「穏健」の部分がいかに豊かというところに、時代を超えて楽しめるかというポイントがあるのだと思うんですね。その意味ではこのアルバムは純粋に非常に良いポップス/ロック・アルバムなのです。とにかく曲が良い。全曲良い。捨て曲がない。過去の大衆音楽の流れをきちんと汲んだ良いポップソングとして成立しています。そして、それらが、「ロック演奏」ではあるが「ロックの美学」にはこだわらない形で演奏されているのがいいです。杓子定規ではないので、演奏自体に微妙に味があります。乾いた、しょぼい音もカコイイ。そして音はしょぼいが、音楽は力に満ちているのです。

全体にロックの扇情性というものとは無縁なアルバムなのですが、同時に聴いていて内側からなにか情念を感じます。ルー・リードをはじめバンドのメンバーは反発したという、モデルのニコの参加(アンディ・ウォーホルの要請)は、このアルバムから外面的な「ロック性」を剥奪することに貢献しています。結果、逆説的ですが、より過激な内容となりました。

結局、2001年の今、「ロック的な音」というのはもはや過激さの対極にあるんですよね。その意味、このアルバムは過激なポップアルバムであります。 (8/22/01)