10,000Hz Legend ★★★★

10000 Hz Legend

Air / 10,000Hz Legend

::★★★★::2001::Astralwerks::club::rock::pop::
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パリの二人組エアーといえば、ラウンジっぽく、またパリらしくどこかキッチュな感じの音をつくりだすクラブよりのユニットだと言う印象がありました。といっても前作はちょっと小耳にしたぐらいなのですが。しかし、この二作目はもはやクラブサウンドとも言えないような内容であります。たとえば、同じくパリのダフト・パンクなんかも、二作目でぐっとポップス/ロック寄りの音になりましたが、少なくとも「エレクトロニック」という点には執拗なこだわりをみせていて、クラブサウンドの発展系という感じでした。しかし、このエアーの二作目は、曲の大半は生ドラム、ベース、アコースティック・ギターを前面に押し出した非エレクトロニックな楽曲群で、しかもテンポもミディアムかスローが中心、かつ、アレンジもダウナーな感じで、もはやクラブでもなければラウンジでもない。その意味では問題作か。ただ、ゲストボーカルやミュージシャンを多数起用していて、演奏面での<核>を設けることを回避しているところや、音楽的にも何をやるか予測がつかない(もっといえば、何が起こってもおかしくないと思わせられる)ところなど、いわゆるロック的な姿勢とは一線を画していて、その意味ではクラブ的なのかも? (ロックというのは求心的でクラブ音楽というのは拡散的だと考えると。)

内容の話をすると、なんというか、「意図」というものを読み取るのを拒否するようなところがあって、ジャケットなどのアートワークもふくめ一体どこまで本気でやっているのかさっぱりわからず、まあ、そういう人をおちょくったようなところが良いといえば良いのか。全体に曲自体は良いと思う。シングルとなっている「Radio No.1」(これが80年代エレクトロポップ的な曲で、なんか聴き手をおちょくっているような気もするけど、同時にすごく良い曲でもあり‥)以外は、飛び抜けて良い曲はないんだけれど、どの曲も細かいところで良いコードやメロディがちりばめられていてあなどれない。ジェイソン・フォークナー、ベック、バッファロー・ドーターというある意味豪華なゲスト陣の顔ぶれもこのアルバムを象徴しているような。 (8/5/01)