Memories, Chronicles and Declarations Of Love (Proofs, Texts, And Denials) ★★★★

Memories Chronicles & Declarations of Love

Marisa Monte / Memories, Chronicles and Declarations Of Love (Proofs, Texts, And Denials)

::★★★★::2000::Metro Blue::brazil::pop::rock::
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なんつうか、ますますマイ・ペエスが板についてきた感じ。前作がけっこう泥臭かったから、それを押し進めるかと思いきや、またもや英米ポップ/ロックの色が強い作品となりました。試聴したときは買うのをためらったぐらいです。買って何回も聴いてもその「ポップ/ロックより」という印象は変わりません。ところがその中庸っぽい雰囲気が、何度も聴くうちにたまらなく気持ちのよいものになってくるから不思議であります。「ますますマイ・ペエスが板に」と言ったのはそういう意味。もはやマリーザには「ブラジル音楽の自己同一性とは」とか「ポップやロックとどう折り合いをつけるか」とかいう問題設定は眼中にないように思えます。肩の力がまったく入ってなくて、マイ・ペエスなのだ。だから、70年代のアメリカのシンガーソングライター的にもきこえる「NAO E FACIL」(4曲目)を聴いても、それがどの程度ブラジル的かというのはもはや問題ではないんですね。ただリラックスして気持ちの良い歌とサウンドだというだけなのです。その意味で、精神的には非常にボサ・ノヴァ的なアーティストと言えるのかもしれません。また、英米ポップ・ロックっぽいアルバムだと書きましたが、良く聴けば、5曲目あたりからしだいにブラジル色が強くなります。その流れはひたすら美しいピアノ伴奏の7曲目に続く8曲目、あるいはこれまた溜息がでるほど美しいスウィート・ボサの12曲目あたりでひとつの山を迎え、ラストはジャズ/ポピュラー的バラード(カエターノ作品)で幕を閉じることになります。最後まで甘美なのだ。マリーザの音楽キャリアの中でこの作品は突出した特徴をもつわけではないのですが、もしかしたらこれは密かな最高傑作かも。 (10/17/00)